委託者
委託者
委託者の地位
委託者になるには、意思能力があれば足ります。逆にいえば、認知症等により意思能力が失われた後には信託はできないので、注意が必要です。なお、遺言信託については民法上の遺言能力が必要です。
委託者の権利
委託者は、信託設定時に自らの財産を信託財産として拠出し、信託目的(信託財産を管理・運用・処分する目的)を設定します(信託法3条)。これにより、当該信託契約の姿が明確になるのです。
信託設定後、委託者には以下の権限が認められています。なお、これらの権限は、信託契約による信託の場合を想定しています(遺言信託の場合は、信託が効力を発する委託者死亡時には委託者が存在しないため。また信託宣言の場合は、委託者と受託者は同一人物であり、信託目的などに齟齬が生じ得ないため)。
・ 信託の目的に反するような信託の変更、併合、分割については委託者の合意を要すること(信託法149条、151条、155条)
・ 信託行為の時点で予見できなかった特別の事情があった場合、その事情に基づく信託の変更・終了を命ずる裁判を裁判所に求めること(信託法150条、165条)
・ 委託者と受益者の合意により、信託をいつでも終了させること(信託法164条)
・ 受託者が欠けた場合に、委託者と受益者の合意により新しい受託者を選任すること(信託法62条1項)
これらの権限は任意規定であるため、信託契約に特段の定めをして委託者にこれらの権限を与えないようにしておくことも、逆に、委託者の権限を拡大させることもできます。
委託者の地位の承継
委託者の地位は相続の対象となりますが、遺言信託の場合には、委託者の相続人と受益者の間で利害が対立する可能性があるため、委託者の地位は相続により承継しないのが原則です(信託法147条本文)。