活用事例⑧相続円滑化効果(不動産荒廃防止)
活用事例⑧相続円滑化効果(不動産荒廃防止)
妻に先立たれ、子どももいない男性
Aさんは、妻Bに先立たれ、子どももいない。Aさんの相続人は、Aさんの兄弟と、亡くなった兄弟の子のみである。
Aさんの兄Cさんは、亡くなっており、Dさんという子どもが1人いるが所在は分からない。Aさんの弟Eさんは健在であるが遠方に住んでいる。Aさんの妹Fさんは、認知症で施設に入院している。
Aさんの財産としては、自宅土地・建物(時価約5000万円)のほか、現金200万円と、預金4000万円である。
このような財産はあったものの、兄弟の状況は上記のようなものであったことから、Aさんには、特に財産をどのように分割するかの希望もなかったが、遺産分割協議をAさんの相続人となる者たちですることは事実上不可能ではないかと心配していた。そうなると、Aさんの財産は手つかずの状態になるし、自宅不動産は、空き家として荒廃し、近所にも迷惑をかけてしまうおそれすらある。Aさんは、遺言執行者を指定すれば、その者が相続財産の管理や、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持つことになることを知り、自宅不動産の管理を目的として、ひとまずしっかり者のEさんを遺言執行者に指定した遺言書を作成した。
しかし、Aさんが亡くなった後、集まった親戚らはEさんを含めて、遺言書の存在を知らず、遺言執行者が選任されることはなかった。葬儀に来たEさんは、遺産分割協議を行うために、所在不明のDさんについて不在者財産管理人選任の申立てを行い、Fさんについては後見人をつけるようにFさんの子らに依頼したが、遠方に住んでいるEさんにとっては手続きも一苦労であるし、Fさんの子らも協力的ではなかったため、遺産分割協議に入ることはできなかった。Aさんがコツコツ行っていた預金は口座が凍結されたままであるし、自宅不動産は、どんどん荒廃していった。
近所の人も、Aさんの不動産の草木が伸びるなど、荒れ放題で、衛生状況も悪いうえ、不良たちが肝試しに利用したりして治安も悪化していることから何とかしたいが、どうしようもできずに、困っている。

- →委託者兼受益者を相談者A、
受託者をE、信託財産を現金200万円と、
預金4,000万円、相談者Aの自宅土地・建物
(時価5,000万円)とする信託契約を締結する。
→金銭についてはEが「委託者A受託者E信託口」とする名義の口座を開設し、
不動産の登記名義はEに変更する。
→遺産分割協議が円滑に進まない場合でも、
口座凍結による塩漬けを避けることができ、
葬儀費用の引き出しが可能となる。
また、不動産の管理者も明確になったため、
相続開始後すみやかに、
Eが単独で不動産の管理等の管理を行うことができる。