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弁護士法人Martial Arts【第一東京弁護士会所属】代表弁護士 堀 撤兵

信託の法律構成

信託の法律構成

(委託者の損失てん補責任等)

信託の法的意味

 信託が成立すると、物権的側面と債権的側面の両面で効果が生じます。

 まず、物権的側面における効果としては、信託財産の所有権が委託者から受託者へ移転することになります。ここでいう所有権は、信託の目的や受益者の存在によって制限された所有権です。

 次に、受託者は、信託財産を信託目的に従い管理・運用・処分する債務を負います。つまり受益者は、受託者に対して信託財産の管理運用等に関する債権を有することになるのです。これが債権的側面における効果です。

信託違反の効果

 受託者に義務違反があった場合、信託の債権的側面を重視し、これを債務不履行であるとする説が有力です。債務者である受託者が、債権者である受益者に対して、任務懈怠による債務不履行責任を負うという考え方です。

 これに対して、信託の物権的側面を重視し、受託者がその管理下にある信託財産を棄損したものとして、不法行為責任を負うとする説もあります。受託者が加害者で、受益者が被害者であるという考え方です。

 こうした議論はさておき、信託法では、信託違反の効果として「損失の填補」「原状の回復」の2点を挙げています。

信託法40条

 (委託者の損失てん補責任等)

 第四十条受託者がその任務を怠ったことによって次の各号に掲げる場合に該当するに至ったときは、受益者は、当該受託者に対し、当該各号に定める措置を請求することができる。ただし、第二号に定める措置にあっては、原状の回復が著しく困難であるとき、原状の回復をするのに過分の費用を要するとき、その他受託者に原状の回復をさせることを不適当とする特別の事情があるときは、この限りでない。

 一 信託財産に損失が生じた場合当該損失のてん補
 二 信託財産に変更が生じた場合原状の回復

信託財産の所有者

 信託が成立すると、委託者は信託財産の所有者ではなくなるため、委託者の債権者は信託財産の差押えが不可能になり、また、委託者は一切の管理処分権限を失います。そのため、信託が成立すると、信託財産の所有権は受託者に移行するといわれています。しかし、所有権が受託者に移行したとしても、受託者が信託財産を自らのために使用・収益・処分できるわけではありません。受託者は、信託の本旨である「受益者のために」信託目的という制限つきの所有権を有しているにすぎないわけです。

 では、信託財産の真の所有者は受益者であるかというと、そうでもありません。たしかに受益者は、信託財産の運用により得られる収益から配当を受けたり、将来信託契約が終了した時点で信託財産の返還を受けることができます。税務上も、信託財産の実質的な所有者は受益者であると考え、受益権が移転した場合には贈与税や相続税を課税する仕組みになっています。しかし、受益者は受益権を有してはいますが、信託財産そのものを所有しているわけではありません。仮に、受益者が債権者から資産の差押えを受ける場合でも、その対象は受益権であり、信託財産そのものが差し押さえられることはないのです。

倒産隔離機能

 委託者が委託した信託財産については、委託者の債権者のみならず、税務当局であっても差し押さえることは不可能です(信託法23条1項、同6項)。ただし、詐害的な信託は、債権者により取り消されることがあります(信託法23条2項ないし4項)。また、登記・登録をしなければ第三者に対抗できない財産については、登記または登録が必要です(信託法14条)。

 また、自己信託(信託宣言)の場合は、委託者=受託者であり、委託者の財産が信託財産となっても、委託者兼受託者の管理であることに変わりはありません。しかし、この場合も信託財産は差押えの対象にはなりません。

 自益信託(委託者=受益者)の場合も、信託財産は委託者の財産ではなくなるため、委託者の債権者は、受託者名義になっている信託財産を差し押さえることはできません。ただし、委託者(兼受益者)の固有の財産である受益権を差し押さえることは可能です。

 また、受託者の債権者も信託財産を差し押さえることができません。たとえ受託者が破産手続開始の決定を受けたとしても、信託財産に属する財産は破産財団には属しません(信託法25条1項)。信託財産は名目上、受託者の名義となりますが、受託者は受益者のために信託財産を預かっているだけであって、実質的に信託財産を所有しているわけではないからです。そのため、受託者には分別管理義務が課されており、受託者固有の財産とは明確に区別して管理する必要があります(信託法34条)。

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